工程能力指数Cpとは
工程能力とは、定められた規格の範囲内で、製品を生産できる能力のことである。
その評価を行う指標のことを工程能力指数:Cp(Process Capability)と言う。
Cpの計算方法は、検討対象の規格が両側か片側かで以下のようになる。
◆両側規格の場合
◆片側規格の場合
上限の規格の場合
下限の規格の場合
まずは、一般的な両側規格のCpについて、例をいくつかあげて計算する。
ある工場で生産している製品の長さが規格上限:13cm、規格下限:7cmであったとする。
現場での狙い値は中央の10cmで加工している。
例1)長さの平均値10cm、標準偏差0.5cmの工程
エクセルでNORM.DIST関数を使って確率密度の正規分布曲線を描いた。
両側の規格に対して生産した製品の長さが、ばらつきを含めても十分規格内であり、工程能力指数Cpを計算すると、
となり、十分過ぎるくらい高い水準で管理された工程であることがわかる。
実際にこの工程で不良品(=長さが規格外)が発生する確率を計算すると「0.000000044%」である。
例2)長さの平均値10cm、標準偏差1.5cmの工程
次のパターンでは、製品の平均値こそ中央の10cmで管理できているものの、標準偏差(≒データのばらつき)が大きいので、工程の状態は悪い。
であり、不良品の発生確率は3.86%と高い。ばらつきが大きいために不良のムダが多いパターンだ。
例3)長さの平均値12cm、標準偏差0.5cmの工程
3つ目のパターンは、標準偏差は小さく抑えられているが、平均値が本来の狙いよりもズレた状態の工程だ。
平均値が規格上限側にシフトしているため、図の赤斜線部で示した部分の面積が不良品となる。
工程の状態としては良くないのだが、Cpを計算すると
となり十分過ぎる程管理された工程という結果になるが、何かおかしい。
不良品の発生確率(赤斜線部の面積)を計算すると、1.34%となり例1に比べても格段に高い。
Cpの計算では、規格の幅と標準偏差のみを用いるため、工程でつくられる製品の平均値は必ず規格の中央にコントロールできていることが前提になっている。
例3のように平均値が中央でない場合は、偏りを考慮したCpkで計算する。
実際の工程では「Cpk」を使う場面が圧倒的に多い
Cpkとは、製品特性の平均値が規格の中心値よりどれだけずれているかを考慮したものである。
実際に試作段階や量産で工程能力を評価したい時、評価前の状態では平均値が中央でコントロールされているか不明な場合が多いので、中心からのずれを補正するCpkを計算する方が早い。
Cpkの計算には以下の2つの方法がある。
1.片側規格のCp(上限/下限)をそれぞれ求め、小さい値をCpkとする。
2.データの偏りを示すKを計算し、Cpから計算する。
それぞれの計算方法を先ほどの例3を使って確認してみる。
1.片側規格のCp(上限/下限)をそれぞれ求め、小さい値をCpkとする。
上限規格
下限規格
よって、両者比較で小さい方を採用するのでCpk=0.67
2.データの偏りを示すKを計算し、Cpから計算する。
となり、どちらの計算方法でもCpkは同じであることが確認できた。
個人的にはパターン1の方が断然使いやすいと思っている。
工程能力指数の判断基準
工程能力指数(Cp,Cpk)で工程の状態を判断する時の一般的な目安は以下。
業界や対象の製品によって若干異なる部分(例えば安全を非常に重視している)はあるが、多くは工程能力「1.33」を目標値にしている。
理想的には高ければ高いほど望ましいが、コストとのバランスとなる。
それぞれの工程能力で実際の不良品の発生確率がどの程度かも示しておく。
確率的にもCpk=1.33というのが現実的な落としどころになるというのがわかる。