
表には出にくいけれど、現場を支える重要な役割を担う生産技術職。
ときに「便利屋」「何でも屋」として過酷なプレッシャーにさらされ、やりがい以上に“しんどさ”が勝る瞬間もあります。
この記事では、10年以上の経験から見えてきた「生産技術職のツラさ」を5つの実例を通じてリアルに紹介します。
- 1.トラブル時の「即応力」へのプレッシャー
- 2.他部署との板挟みになる調整業務
- 3.新ライン立ち上げ時の地獄スケジュール
- 4. 不具合対応での「犯人探し」文化
- 5. 改善提案が評価されない(現場に理解されない)
- おわりに:それでも生産技術を続ける理由
1.トラブル時の「即応力」へのプレッシャー
■事例:22時、突如の設備停止とライン停止
~ある日、夜勤中の現場から「主幹ラインの搬送装置が止まった」と連絡。時刻は夜22時。設備の制御盤にはアラームランプが点灯し、オペレーターも原因不明。駆けつけてPLCの履歴を確認、電源系統のリレー焼損と特定するまでに1時間。その間、生産は完全停止。
この間、上司や他部門からの電話も鳴り止まず、プレッシャーは最高潮。~
深夜対応で体力的にきつい中、冷静な判断と復旧作業が求められます。経験が浅いメンバーが担当する現場では、技術的な支援要請も頻繁に入り、睡眠時間を削られることもしばしば。
精神的にキツいと感じる瞬間
・原因究明と復旧を「今すぐ」求められる極限状況
・判断ミスが長時間停止や損害に直結
・休日・夜間の呼び出しは避けられず、常に携帯に気を張る
2.他部署との板挟みになる調整業務
■ 事例:製造と設計、どちらの要求も飲めない現実
~新製品の導入時、製造部からは「簡単な作業構成にしてくれ」、一方で設計部からは「現行品と同等以上の品質確保が前提」と要求される。両者の要望はしばしば相反し、設計変更や治具改善に終わりが見えない。
生産技術としては、妥協点を探りながら、最終的に「落とし所」を見つけていく必要がある。~
交渉力や調整力だけでなく、両者の技術的背景や意図を深く理解するスキルも必要です。
「誰の味方か」と問われることもあり、人間関係のストレスにもつながりやすい業務です。
人間関係で疲弊しやすいポイント
・双方からのプレッシャーに耐えながら中立を保つ難しさ
・意見の衝突を仲裁する精神的疲労
・自分の提案が通らなくても責任だけは問われる
3.新ライン立ち上げ時の地獄スケジュール
■ 事例:1か月間休日ゼロ、納期最優先の現場
~ある大型設備の新設プロジェクトでは、納期が絶対厳守。図面から設備手配、レイアウト設計、現場施工、試運転、作業者教育まで、すべてに関わることに。
気がつけば1か月間休日なし。最終週には「初期流動不具合0件で出荷」という無理難題まで加わる。体力・気力ともに限界へ。~
「納期さえ守れればOK」という雰囲気が蔓延し、多少の無理や問題点は後回しにされがちです。
やり切った後の達成感は大きいですが、燃え尽き症候群になる人も少なくありません。
体力的・精神的に消耗するところ
・プロジェクトの進行と同時に通常業務も処理する地獄スケジュール
・長期残業や休日出勤が常態化し、私生活に支障が出る
・成果が見えづらく「頑張り損」と感じることも
4. 不具合対応での「犯人探し」文化
■ 事例:品質異常で“まず疑われる”生産技術
~量産品の品質クレームが発生した際、真っ先に呼び出されるのが生産技術。
現場からは「工程設計に問題があるのでは?」、品質保証からは「初期流動で何を確認したのか?」と厳しい目。
調査の結果、実際は材料ロットの問題だったが、「もっと早く気づくべきだった」と結局ダメ出し。~
根本原因の特定には複数部門との連携が不可欠ですが、初動での対応の遅れはそのまま信用問題につながります。
とにかく「誰が悪いか」を探す雰囲気が生産技術を疲弊させます。
責任が重く孤立しがちな場面
・トラブル時に常に疑われる立場での精神的重圧
・改善提案・報告書作成までを一手に担う多忙さ
・「結果オーライ」が通用しない世界
5. 改善提案が評価されない(現場に理解されない)
■ 事例:設備改善で工数削減→作業者からクレーム
~長年の課題だった工程の手戻りを削減するため、自動機を導入し作業負荷を軽減。
定量的に見ても大幅な工数削減が実現。しかし現場からは「かえってやりづらい」「段取りが面倒になった」と不満の声が噴出。最終的に改善が取り下げられる。~
現場目線に立った設計の難しさを痛感する瞬間。
改善が受け入れられないと、やる気を削がれるだけでなく、評価にもつながらないという虚無感に襲われます。
やりがいを見失いそうになる時
・技術的成果が現場に理解されず無駄になる虚しさ
・作業性よりも“慣れ”を重視される現場文化とのギャップ
・結果的に改善を撤回せざるを得ないストレス
おわりに:それでも生産技術を続ける理由
生産技術職には、目立たない苦労が山ほどあります。
しかし同時に、ラインが立ち上がり、製品がスムーズに流れ始めたときの達成感は格別です。チームで問題を乗り越えたとき、技術で現場を変えられたとき、「やっていてよかった」と心から思えます。
多忙で報われにくい面がある一方、自らの技術で人やモノの流れを改善することができる生産技術職は、モノづくりの最前線に立つやりがいのある仕事です。


